ネットワークビジネス(MLM)における法律の規定と違法行為

koutei zyosei

ネットワークビジネス(MLM:マルチレベルマーケティング)を行う際に、多くの人が最初に考えることは「ネットワークビジネスを行っても違法にならないのか?」ということだと思います。

結論からいうと、ネットワークビジネスは違法ではありません。しかし世の中には、ネットワークマーケティングを利用した悪徳な商売を行っている人もいます。つまり、ネットワークビジネス自体は問題ありませんが、やり方によっては違法になってしまいます。

そのため、ネットワークビジネスを始める前に、ネットワークビジネスの法律上の位置づけを知っておくことが大切です。

そこで今回は、ネットワークビジネスと法律の関係について述べます。

法律での規定

ネットワークビジネス(MLM)という言葉を聞くと、「ネズミ講」や「悪徳マルチ商法」をイメージする人は少なくないと思います。しかしそのような人達のほとんどは、明確な根拠をもっておらず、あいまいな知識や噂から悪いイメージを作り上げています。

ネットワークビジネスは、「特定商取引に関する法律(特商法)」によって明確に規定されています。

特商法とは、訪問販売や通信販売といった消費者トラブルが起こりやすい取引方法を対象に定められたものです。具体的には、事業者側が守るべきルールと消費者を保護する内容が規定されています。

例えば、よく知られる「クーリングオフ」といったものは、特商法によって定められた制度です。

特商法は、このようなルールを定めることで、事業所の悪質な行為を防止して、消費者を守るために作られたものです。特商法の対象となる取引類型には、以下のようなものが挙げられます。

・訪問販売

・通信販売

・電話勧誘販売

・連鎖販売取引

・特定継続的薬務提供

・業務提供誘因販売取引

・訪問購入

ネットワークビジネスは、このような消費者を守るための特商法の中で「連鎖販売取引」という名前で規定されています。この「連鎖」という言葉が、ネットワークビジネスに対する悪いイメージを作っている原因です。

また、ネットワークビジネスはMLM(マルチレベルマーケティング)とも呼ばれ、言葉の問題ではあるものの、「マルチ」という言葉からもよくない印象を与えてしまっているという現状があります。

しかし、ネットワークビジネスでいう連鎖とは、「商品の愛用者による口コミによって愛用者を増やしていく」という意味であり、良質な商品を世の中に広めていくという良い連鎖のことです

つまり「商品を使ってみて気にいったら、周りに広めてくださいね。そこで愛用者が増えたら、その成果として報酬がもらえますよ」というものです。

このようにネットワークビジネスは、良い商品を世の中に連鎖させていく方法であり、先ほど述べたような法律を守っている限りは合法的なものです。

まずはこのことをしっかりと理解しておいてください。

違法になる行為

ただそうは言っても、ネットワークビジネスの仕組みを利用して悪質な商売を行っている人がいることも事実です。知らずにそうならないためにも、ネットワークビジネスを始める前に、行ってしまうと違法になる行為を認識しておく必要があります。

そこで、以下に違法となる代表例を2つ挙げて解説します。

ネズミ講

ネズミ講という言葉は、誰もがよく聞く言葉だと思います。多くの人は「ネズミ講=ネットワークビジネス」と考えていますが、この2つには明確な違いがあります。そのことを理解しなければいけません。

ネズミ講は「無限連鎖講」といい、商品やサービスの売買が存在しません。見せかけの相互扶助精神を元にした金銭配当組織です。

口コミという点ではネットワークビジネスと同じですが、商品やサービスの売買がないという明確な違いがあります。またネズミ講は、「無限連鎖講の防止に関する法律」によって禁止されています。ネズミ講は、参加して勧誘するだけでも違法行為になりますので注意してください

悪徳マルチ商法

ネズミ講と並ぶ不当な商法として、「悪徳マルチ商法」があります。悪徳マルチ商法は、商品やサービスがないネズミ講とは違い、一応商品やサービス、書類などが用意してあります。しかしその商品やサービスは、全く買う価値がないようなものです。

悪徳マルチ商法は、そのような生活に必要もなく価値もないような劣悪な商品を買わせようとする商法です。そのため、商品に対する特性や内容が不明瞭のものがほとんどです。その結果、売る人は「とにかく儲ける」という説得力のない言葉を使って商品を売ろうとします

このように、悪徳マルチ商法も口コミという点ではネットワークビジネスと共通しています。しかし、「必要性も価値もない商品を無理やり売る」というところで、明確に違いがあります。

このような悪徳マルチ商法は、先ほど述べた特商法によって違法になります。

具体的には「商品の価格が、商品価値や市場価値と比較して、過剰に高いものは違法となる」とされています。悪徳マルチ商法における商品は、誰でもわかるような明らかな劣悪品です。そこが、良い商品を広めようとしているネットワークビジネスとの違いになります。

事実不告知と不実告知

ネットワークビジネスでは、ネズミ講や悪徳マルチ商法のように明らかな詐欺行為以外にも注意しなければいけないことがいくつかあります。その中でも、特商法で禁止行為とされている「事実不告知」と「不実告知」について理解しておくことが大切です。

事実不告知と不実告知とは

ネットワークビジネスでは、特商法によってさまざまな禁止行為が定められています。ネットワークビジネスを行う上では、こうした禁止行為を行わないように注意しなければいけません。

そしてその中でも、無意識に行ってしまいがちである禁止行為が「事実不告知」と「不実告知」の2つです。

事実不告知とは、「ネットワークビジネスに勧誘する際に伝えておかなければいけないことを、わざと伝えない」という行為を指します。

例えば、ネットワークビジネスを行って、年収1000万円を超すのは努力が必要であるのに、そのことを伝えないような場合です。こうしたケースでは、年収1000万円を超えるためには、どれくらいの活動や成果を出さなければいけないかを伝える必要があります。

一方で不実告知とは、「ネットワークビジネスに勧誘する際に、嘘を伝えて登録させる」という行為になります。

例えば、ネットワークビジネスを始めて半年で、努力なく月収100万円を超えることはほとんど不可能なことです。それなのに、「何もせずに半年で月収が100万円を超える」などの嘘をついて勧誘するような行為は、不実告知になります。

ネットワークビジネスに勧誘する際や、契約の解除時に、こうした事実不告知や不実告知によって、登録を促したり、契約の解除を妨げたりすることは禁止行為に当たるため注意してください。

勧誘時に告知すべき内容

特商法で規定されている禁止行為の1つとして、勧誘時や契約解除時などの事実不告知や不実告知があります。このように、伝えるべき事実を教えなかったり、嘘をついたりすることは法律違反になります。

そして、そうした事実不告知と不実告知に関しては、具体的な内容が定められています。

ネットワークビジネスにおける勧誘時や契約解除時の事実不告知と不実告知に関しては、以下の5つの事項に注意しなければいけません。

・商品の種類や性能、品質等に関すること

・特定負担に関すること

・契約の解除に関すること

・特定利益に関すること

・登録において、相手の判断に影響を及ぼす可能性が高いこと

特に以上の5つに関しては、ネットワークビジネスの勧誘時や契約解除時に、正しい内容を不備なく伝えなければいけません。

これは、ネットワークビジネスの経験が浅い人でも同じように当てはまることです。つまり、「経験不足で伝えるべきことを伝え忘れていた」という場合でも、法律に反することになります。

そうならないためにも、ネットワークビジネスを開始する際は、必ず伝えるべき事実を事前に把握しておくことが大切です。

違法行為に対する行政処分

ネットワークビジネスを行う際には、こうした違法行為に対する行政処分の内容を知っておくことも大切です。また、こうした行政処分に関しては、年々厳しくなってきている現状があるため、常に法改正を意識して確認しておく必要があります。

そこで次に、「ネットワークビジネスの違法行為に対する行政処分」について解説します。

業務停止期間

ネットワークビジネスでは、「特定商取引法(特商法)」に定められた禁止行為を行ってはいけません。そうした法に反する行為を行った場合には、当然ながら主宰企業は行政処分を受けることになります。

主宰企業が受ける行政処分の中でも多いのが「業務停止命令」です。業務停止命令とは、その名の通り「ネットワークビジネス会社としての業務を行えなくなる」ということです。

こうした業務停止命令では、業務の中でも「期間中における勧誘行為」が禁止されることが多いです。

そして、具体的な業務停止期間は、2016年現在では「最長1年」となっていますが、今後「最長2年」まで延びる可能性が大きくなっています。さらに、懲役刑も2016年現在では2年が上限ですが、3年に改めるという見解も出されています。

このように、ネットワークビジネスで法に反すると、業務停止が命令されることになります。

そして、業務停止期間は、このように1年が最長であるため数ヶ月であるところがほとんどです。ただ、処分内容に関しては、年々変化しているため、ネットワークビジネスを行う上ではこうした法改正にも目を向けておく必要があります。

その他の罰則

ネットワークビジネスにおいて、特商法に定められた禁止行為を行った場合、業務停止命令を受けることが多いです。また、違法行為を行って受ける処罰には他にもたくさんあります。

例えば、事実を教えずに主宰会社へ登録させるような「不実告知」という禁止行為などを行うと、その法人に対して罰金が課せられます。具体的な罰金は2016年現在では「300万円以下」ですが、「最高1億円以下」にまで引き上げられる可能性が高いです。

また他にも、業務停止命令を受けた法人の役員などが、新たに会社を立ち上げて業務禁止命令を受けている範囲内の業務を行うことも禁止されています。

さらに、不実告知によって消費者がお金を騙し取られた場合、行政は事業所に対して返金命令を行うことができます。

そして、こうした行政処分などの指示に従わない場合にも、法人や個人に対して罰金や懲役などの処罰が下されるようになります。

このように、ネットワークビジネスにおける違法行為を行った場合には、業務停止命令以外にも、さまざまな罰則を受ける可能性があります。より多くの人に正しいネットワークビジネスが伝わっていくためにも、このような法律は大変重要です。

こうした理由からも、ネットワークビジネスを行う際には、違法行為を行ったことに対する罰則についても理解しておくことが大切です。

今回述べたように、ネットワークビジネスは合法的なものです。ただその手法を使ってネズミ講や悪徳マルチ商法はもちろん、特商法で定められた禁止行為を行うと違法になります。

そのため、MLM(マルチレベルマーケティング)として知られるネットワークビジネスを始める前には、特商法の内容を把握して違法になる行為を理解しておくことが大切です。そして、法律に反した場合には、どのような処分を受けるかについても知っておいてください。

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